3Dプリンターで電子基板を作る(第一回)
はじめに
皆さん、電子基板の試作する時ってどうしていますか?
ブレッドボードを使うとか、ユニバーサル基板を使うとかいろいろあると思います。最近はプリント基板が非常に安く作れるので、試作段階から基板を発注することもありますね。生基板に転写してエッチング液で処理するという方法もあります。
装置の価格がかかりますが、レジストプリンターで印刷してエッチングしたり、銀インクで印刷したり、生基板を彫刻機で削るなんて方法もあります。
最近、3Dプリンターが非常に安価に手に入るようになり、自分も7~8年くらい前に購入して色々作成していたのですが、3Dプリンターの精細な形状作成をなんとか基板の試作に活用できないかと考えていました。
FDM形式の3Dプリンター用フィラメントには導電性フィラメントというものああるのですが、抵抗が高すぎて使い物になりませんでした。価格も結構高いですしね。
色々考えた結果、今回一つの形が完成したので、ブログにまとめるとともに、今後のプロジェクトとして発展させていこうと思います。
概要
基板自体を3Dプリンターで自作する。
基板の裏面の導線部分に溝を作り、その中にスズメッキ線を埋める。
パーツを表から差し込み、スズメッキ線とはんだ付けする。
必要に応じて、裏面導線部分を埋めて固定し、絶縁と線の固定を行う事が出来る。
実際の手順
FreeCADでの図面描画
FreeCADという無料の3次元CADを使用します。
今回はヘッダーピン6ピンのピン変換を行う基板を作成します。
まずはヘッダーピン自体を抜いた基板本体を作成します。
結線の端点に断面を書きます。断面は台形とし、表側が細い構造とします。こうすることでスズメッキ線を埋めた時に、固定が簡単にできます。台形の深さは1mm(基板の半分まで)、短辺が0.75mm、長辺が1.5mmとします。
同様にすべての結線部分を作成し、切り取ります。
結線
スズメッキ線で、溝を埋めていきます。断面の台形と光造形の精度などがあるので、思ったようにフィットする断面を作るには何回か試行錯誤が必要かと思います。自分は2回目で思ったような断面にできました。スズメッキ線を端に合わせ、押し込むと固定させることができます。カーブ部分では端を抑えて曲げ、次の直線溝に押し込むと綺麗に曲げられます。曲がり部分を直角ではなくて、少しカーブをつけるともっとフィット感が上がりそうなので、次回試してみます。
表側にピンヘッダーを差し込みます。このとき、裏側のスズメッキ線が外れないように、差し込むピンヘッダーの裏側のスズメッキ線を指で押さえながらやるといいです。
ピンヘッダーとスズメッキ線をハンダで結線します。UVレジン上にははんだは定着しないので、あくまでピンヘッダーとスズメッキ線をハンダでつなぐ感じです。部材自体を温めてハンダを流し込みます。
UVレジンは熱に弱いので、多少溶けることがあるかもしれませんが、自分がやった限りは問題はありませんでした。
テスト
最後に各変換ピンごとにテスターで結線チェックを行います。全く問題はありませんでした。
ピンヘッダーとスズメッキ線がハンダでしっかり止まっているため、ピンヘッダーを引っ張っても問題ありません。またスズメッキ線自体も溝に埋まっているため、ずれることが無く、別のスズメッキ線と接触する危険もありません。
必要に応じて、裏面にUVレジンを塗って、UVライトを当てて固定させてやれば耐久性のある基板になるのではないかと思います。
今後の課題とやってみたいこと
スルーホールの表側の穴がふさがる
初期層の露光時間が長いため、スルーホールの表側の穴がふさがってしまいました。初期層分だけ大きめの穴をあけるなどの対策が必要かなと思いました。全部後から抜いても大した手間ではないのですが、自動でできることはやりたいですね。ラフトとサポーターを使用すれば穴は維持できるのですが、その場合光造形の仕組み上、板を斜めに印刷しないといけないこともあり、印刷時間がかかります。直置きの場合の印刷時間3分は試作としては最高でこれを犠牲にしたくはないので、穴を維持できる方法を考えたいです。
スズメッキ線のカーブ部分の処理
今回、結線部分の溝の曲がり部分を垂直に切りました。実際にスズメッキ線を埋める場合、幅のマージンがあったので、問題は無かったのですが、この部分をカーブにすればスズメッキ線を埋めるのがもっと簡単になったかと思います。仕上がりもきれいになりそうですし。
線間隔をもっと細かく
今回はユニバーサル基板での実装と同程度を考えてある程度線と線の間隔を確保していたのですが、もう少し細かい基板も作成できそうです。トライしてみます。
ジャンプ線の設置
ユニバーサル基板で回路を組む場合、クロスするラインを設置するために被覆線を使用してジャンプさせることがあります。このジャンプ構造を3Dプリンターで印刷するときにブリッジなどを設置して回避する方法を考えます。
多層基板の対応
2層基板、3層基板を独立で印刷してねじ止めするなどで多層基板の実装が出来ないか検討してみます。
表面実装部品の対応
細いスズメッキ線をスルーホールで表側に出し、表面実装部品を並べて実装できないかどうか検討してみたいです。ただ、当然FDMでは熱で溶解するので、耐熱性のUVレジンなどを使用した実装になるかと思います。これ値段がねぇ...
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