3Dプリンターで電子基板を作る(第二回)そんなに甘くはない

今回は 失敗談です。

新たな基板づくり

今度は実用的な基板を作成しようと思います。Raspberry Pi Zeroを使って、ステッピングモーターをコントロールする基板です。

モータードライバーとしてDRV8825というボードを使用します。

DRV8825でステッピングモーターをコントロールしようとする場合、フルサポートしたければGPIOのピンを9本使うことになります。かなり配線的に面倒です。DRV8825用に必要なGPIOは以下の通りとなります。

DIR:モーターの正転・逆転を指定するためのピン

STP:ステッピングモーターを1ステップ動かすためのパルスを出力するためのピン

SLP:DRV8825をスリープモードにするためのピン

RST:DRV8825をリセットするためのピン

M2、M1、M0:マイクロステップの指定用のピン(3本)

ENA:制御を有効にするピン。有効にした場合、モーターがロックされる

FLT:DRV8825のエラー(フォルト)を検出するためのピン(読み取り用)

9本GPIOを占有するのは大変なので、STP以外の書き込みをシフトレジスター経由で書き込んでシフトレジスター用のGPIO3本+STP1本+FLT1本で実装することが多いようです。ステッピングモーターを増やした場合、シフトレジスターをカスケード接続することでコントロールできるので、使用するGPIOピン数は(3+ステッピングモーター数×2)で済みます。

とはいえ、今回はDRV8825をGPIOと直結してフルサポートしようと思います。

電源は12Vを使用し、LM2596を使用して5Vに降圧してRaspberry Pi Zeroに入力します。ステッピングモーターには12Vを直接入れられるようにします。

回路図作成

前回と同様、FreeCADで回路図を作成します。スルーホールを直径1.5mmの円柱として作成してみます。

印刷

印刷します。

右上が欠けてしまったので、もう一度印刷します。

全く同じ場所が欠けてしまいました。回転させてもう一度印刷してみます。

右上は綺麗になりましたね。その代わり左下が欠けてしまいました。
表面です。今回はスルーホールがきちんと残りました。

配線

スズメッキ線でRaspberryPiZeroのピンホールをカバーするように溝部分を配線していきます。

ここで重大なミスに気が付きました。RaspberryPiZeroを逆さに使うことを前提に設計していたのですが、基板の配線はそのように組んでおらず、ピンがすべてさかさまになっていました。初歩的なミスですね。実際にユニバーサル基板で組みながらやる時には現物を見ながら配線するので、混乱は少ないのですが、今回はCAD上で行っていたので間違えてしまいました。ちなみにDRV8825の配線も間違えていました。

再設計

同じ轍を踏まないようにやり方を変えます。RaspberryPiZeroやDRV8825のCADデータを取得し、FreeCAD上に配置します。

図面上にRaspberryPiZeroを配置し、スルーホールに合わせます。そのうえで、ピン番号を書き込んでおきます。

DRV8825に関しても同様に行います。

配線部分の図面を書きます。

印刷

印刷を実行します。やはり割れが起こってしまいました。

割れ部分を結線後にUVレジンとUVライトを使って補修します。




3DプリンターのUVレジンバットを外してみたところ、バットの下側でレジンが固まっていました。
スクレーパーで削ります。次回からは変な穴が開かないといいですね。

実装

配線を実装し、表面側を埋め込んで結線します。

テスターでチェックしたところ結線不良が大量に見つかりました(涙)

結線不良

結線不良部分をマイクロスコープで見てみます。

スズメッキ線が短くて届いていませんね。ユニバーサル基板だと多少短くてもハンダを這わせて強引につないだりできますが、今回はスズメッキ線がレジンの中に入っているため、うまく結線できません。
スズメッキ線を長めに配置してハンダでつないであげれば上手く結線できます。
ただ、こんなギリギリを攻めていくのは基板実装として簡単でもないですし、制約が増えてしまうので、図面作成の部分からやり直して結線不良が起こらない構造を考えていきます。

溝サイズ

今回、溝の細い方のサイズ(表面に出ているサイズ)を0.75mmから0.6mmに、底側のサイズを1.5mmから1.2mmにしました。
前の設計では配線したときに余裕がありすぎて、スズメッキ線がガタガタしてしまいました。

今回は配線したときにぴったりになりました。配線もプラスチックへらで押し込んで配線するような感じになり、外れにくくなりました。

今回学べたこと

・CADで図面を書く場合、ピン番号を間違えやすいので、必ずパーツ自体を図面上において、配線ミスをなくすようにする。
・溝サイズを狭くすることによって、配線が綺麗でやりやすくなる。
・スルーホールは1.5mm円形で印刷することで表面もしっかり穴が開く
・普通にスズメッキ線を這わせただけだと結線不良を起こす。設計段階から結線不良を起こさないような仕組みを考慮することにより、手作業部分のテクニックをできるだけ減らせるようにしたい

なかなか実際の基板を作るとなると難しいですね。
次回再設計です(現時点でまだ実装していないので、うまく行くのかどうか)

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